日中交流振興協会編集・発行
TOP2006年第1期インタビュー
  
日中関係は「懐が大きくて、深い関係」との強い思いから

問:稲垣会長は日本で第3位の広告会社「アサツーディー・ケィ」の創業者であるとともに、長年日中友好に大きく貢献してこられたことで広く知られています。本日は、会長がお考えになる中国への魅力や、交流促進のために今後考えられていることなどについてお話をお聞きしたいと思います。まず、そもそも中国との交流を始められたきっかけについて教えていただけますか?

稻垣会長:私は、日中関係は長い歴史をもつ非常に懐が大きくて深い関係だと考えています。その前もそうですが、第一次遣唐使の派遣(630年)以来、中国から文字はもちろん、仏教や儒教、文化の多くが日本に伝わりました。私は小学校5年生の時に、「論語」を全て暗記しましたが、今日、他人にそう話すと非常に驚かれます。また、私の好きな言葉で人生観として荘子の「吾、宇宙の中に立ち、天地の間に逍遥す」だと言うと、ますます目を丸くされます。 しかし、おそらく江戸時代の武士のほとんどが同じように儒教を勉強したでしょうし、いわば「明治維新」の立役者のDNAには儒教精神をはじめ、そうした中国の文化や考え方が深く息づいていたのではないかと思います。 私の世代にも、中国に憧れて北京大学をはじめ、中国の名門大学へ留学をした人が少なからずいますし、私の中で、中国という国は常に親しく、緊密な国であり、特別なきっかけがあって交流を始めたわけではなく、憧憬する所があって自然に交流が始まったのです。

問:日本の広告会社代理店の中で一番早く、中国とのさまざまな文化イベントの企画にも着手されていますね。1997年から毎年、上海マラソンをてがけ、2002年にはGLAYの北京公演にもかかわった協賛なさったとか。また、今号の「走進日本」でも特集していますが、大相撲の中国公演を企画・実施なさったそうですが、その経緯についてお聞かせください。

稻垣会長:言うまでもなく、大相撲は日本を代表する伝統文化の一つですし、個人的にも大好きでよく観ますから、中国に紹介したいという思いはずっとありました。そんな時、中国大使館からもお話をいただいて、ビジネス抜きで日中交流のために2004年北京と上海で大相撲興行を行いました。 もちろん、今回の興行で全てを理解してもらったとは考えていませんが、評判もよく、好感触でした。阿南駐日大使や日本の武中国大使からもおほめの言葉を頂戴しました。

問:次号で特集しますが、東京大学に中国育英基金を創設されたそうですね。

稻垣会長:正式名称は「東京大学 アサツーディ・ケイ 中国育英基金」と言います。 弊社は2006年3月に創立50周年を迎え、その周年記念事業の一環となります。とにかく、日米関係がクローズアップされがちですが、弊社としては、まず中国に目を向けよう、日中友好の具現化の絶好の機会と考え、中国の大学の優秀な卒業生を東京大学大学院修士課程に2年間迎えるための寄付を行うこととしました。 具体的には、東京大学と全学的な学術交流のある北京大学や清華大学、復旦 大学などから推薦のある学生を、毎年7-8名、今後10年間で約75名受け入れる予定ですが、優秀な人材が日本に留学してもらって、日本で好きな研究をして、是非中国に帰って好きな仕事をしてもらいたいと願っております。

問:今後、日中交流促進のために具体的に考えられていることがございますか?

稻垣会長:まず、本年1月に、福建省福州市に現地法人「福建旭通広告有限公司」を立ち上げました。11月には例年通り、上海マラソンを実施します。また、来年2007年にはいよいよ歌舞伎公演を実現したいと考えています。役者はすでに決まりましたが、演目はまだお楽しみです。日本で人気のある、有名な作品をもっていきたいと考えていますのでご期待ください。 2008年には北京オリンピック、2010年には上海万博が開催されます。ますます日中交流はさかんになり、重要性をますことを祈っています。

全員が経営者意識をもち、心の経営を

問:「全員経営」という理念を掲げていらっしゃいますが、中国の若手経営者に向けてのアドバイスをお願いします。

稻垣会長:「全員経営」とは、社長も一般社員も役職に余り関係なく、皆一人ひとりが同じように「経営者意識」をきちんと持つということです。そのために、一人ひとりが自分の力を120%出し切ることが必要です。そして、全員で頑張って利益が出たら、社員になるべく多く配分し、社員が豊かになるよう、心がけることです。私の恩師は「人間の幸せは精神の安定にある」と教えてくれましたが、精神の安定は物質的な安定も必要であることを忘れてはならないと思います。 弊社では社長も役職者も一般社員も皆、同じ机とイスに座っています。つまり、「謙虚に生きる」ということです。中国では56もの民族が仲良く個性を生かして一緒に発展しています。そのためには、是非、全員経営、心の経営を念頭におき、人を大切にしてほしいと思います。多少、哲学的なところがあるかもしれませんが、利益配分の考えはもともと墨子の「兼相愛交相利」思想にもありますので、私は大いに奨励しております。

問:最後に、「走進日本」へのメッセージをお願いします。

稻垣会長:先ほども申しましたように、悠久の歴史を持つ日中関係ですが、今後ますます重要性を増すと考えています。そんな時に、日本を正しく紹介する本ができたことは非常に意義深いと思います。ただ一方で、インターネットの普及により、世界的に活字離れが進行しているのも事実です。私にはインターネット世代には確固としたバックボーンが欠けている気がしてならないのですが、それだけに「走進日本」が担うべき役割は大きいのではないでしょうか。

本日は、大変お忙しい中、貴重なお話をどうもありがとうございました。

スタッフの一人が「菩薩様のような方だ」とつぶやいたのが忘れられない。圧倒されるような知識量、記憶力に加え、穏やかな話ぶり。魅了された。

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