問:産業以外の面では、日中間は政治関係など必ずしも平坦ではありませんが・・・。
佐々木会長:国家にはそれぞれ発展の過程がありますから、軋轢や難しい場面もあるのでしょう。1次産業から2次、3次産業へといった、産業発展の時間軸的な差異が、国と国の関係に影響をもたらすのかもしれません。
それにしても中国の発展の仕方は速い。江沢民さんの主席当時の言葉だったと思いますが「後発優位」と言われた。例えば、電話は固定の設備に時間がかかるけれど、中国では一気に携帯へ進んだ。発展の過程を圧縮して高度化する。そのキャッチアップのための飛躍が、中国は日本よりはるかに大きい。
中抜きの発展で、技術的空洞という心配をする向きもありますが、そこが教育の問題なのです。中国は人材育成をしっかりやっている。大学卒業生の50%が理工学系ですよ。中国発展の着実さは、そういうところに根ざしていると思います。
そういう中国に対して、NECは三つの分野での展開を考えています。一つは、「物を造る」中国です。携帯電話、パソコン生産のかなりの部分を中国にお願いしています。それから、人材の供給という意味も大きい。もう一つが半導体やカラー液晶。つまり巨額投資を要するデバイス事業の分野です。
半導体は、先ほどの首鋼NECに加えて、1997年に立ち上げた上海華虹NECがあります。こちらは中国の国営で、NECは技術参加で資本は少額です。TVやブラウン管をつくる上海広電にも参加していまし、ソフト研究開発の分野では、NECの独自資本で北京に研究所を設立しました。中国科学院との合弁会社もあります。
問:今後のNECの対中関係の主軸はどの分野ですか?
佐々木会長:これからは通信の分野が大きくなっていくと思います。特に第3世代の移動体通信。日本ではすでに始まっていますが、中国もそちらへ移行しようとしています。大きな事業チャンスです。中国は後発優位の立場を生かして発展していく。私たちNECはそういう中で、ハードよりむしろ、システムのソリューションを提供する事業のほうへ軸足を移していくことになるでしょう。
私の中国との関係は、事業の話ばかりではありません。民間交流の仕組みである日中有識者会議という活動をしています。私は日本側の座長で、年2回、中国で話し合いをしています。現在の一番大きなテーマが2010年の上海万博です。どういうコンセプト(考え方)でどんな催しを展開したらいいのか・・・。これは重要な問題なので、分科会を作って、専門的に取り組むことにしました。それから、環境問題や、米中関係の問題もありまして、密度は非常に高いのです。
問:そこで、中国の若者たちへのエールを一言お願いします。
佐々木会長:広い国土、豊富な資源。この巨大な国をどのように運営していけばよいのか。世界中を探しても先生はいません。私たちが提供できる“日本の経験”も生かしてもらって、その上に知恵を加えて、花を咲かせてほしい。農業・農民・農村の三農問題など、どのように解決するか。きっと知恵を絞って、新しい世界への扉を開いてくれると、期待しています。NECは、中国の社会のインフラ(基盤)作りをサポートするシステムを提供していくつもりです。
問:佐々木会長も中国との関係を今後とも濃密に続けていかれるということですね。
佐々木会長:もちろん、プライベートな面でも・・・。私は実は、鉄道ファンでして、SLの運転もできます。という訳で、中国の鉄道に少なからぬ興味を持っているのです。2020年までに鉄道網を2万8000㌔延伸する計画がスタートしたそうですね。中国は世界で最も鉄道の未来が大きな国です。とりわけ、旅客列車の充実が魅力的です。この7月開通したばかりという「青蔵鉄道」は、世界一の高度地域を走るのだそうですね。来年7月から営業開始すると伝えられていますので、ぜひ乗ってみたい。
日中の相互関係は、これから、いろいろな面で深めていけるし、そうしていくべきです。
|